75歳,女性。主訴は不眠。半年前からパニック障害を発症し治療中。治療薬は,副作用のため選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)を使用できず,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)であるデュロキセチンのみで,コントロールは良好であった。1カ月前より,睡眠中に目が覚めてしまうようになり,日常生活に差し支えが出るとのことで外来を受診した。
パニック障害がある人の中途覚醒。現時点では,鑑別疾患は絞りにくいが,「パニック障害」「中途覚醒」より鑑別疾患を挙げることができる。
原則として,不眠を入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠障害のどれかに分類し,鑑別疾患を考える。本症例は中途覚醒であり,アルコール摂取,夜間頻尿,レストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)などが頻度の高い原因として考えられる。アルコール摂取の有無,頻尿の有無,両下肢のむずむず感といった異常感覚の有無を病歴から確認する。
また,パニック障害も不眠を伴うことがあるため鑑別疾患に挙がるが,コントロールが良好であれば可能性は低い。しかし,上記の分類通りにならない場合も多く,アルコール摂取やカフェイン摂取などの頻度の高い原因は常に考える必要がある。
加えて,見逃してはいけない疾患についても幅広く考えておく必要がある。特にうつ病に伴う不眠や,心不全,COPDなどの器質的疾患に伴う不眠は予後不良になりうるため,注意が必要である。
うつ病のスクリーニングとしては,二質問法(表1)1)を用いる。また,心不全のチェックとして労作時呼吸困難,体重増加,夜間発作性呼吸困難の有無を,COPDのチェックとして喫煙歴,咳,呼吸苦などの有無を確認したい。
どちらにせよ,現時点ではあまり鑑別疾患は絞れないため,より詳細な病歴聴取を行い,随伴症状を確認したい。
不眠をみたら,まずはそのパターンを入眠障害,中途覚醒,早朝覚醒,熟眠障害のどれかに分類し鑑別疾患を考えるが,例外は多い。
アルコール摂取やカフェイン摂取などのよくある原因の有無については,問診で必ず確認する。
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