【医療過疎地域における小児集中治療室(PICU)の必要性】
わが国では看護単位が独立した小児集中治療室(PICU)は少なく,地方の医療過疎地域においてはなおのこと少ない。このため,地方においては,一般病室や成人中心のICUで小児重症患者を診ることが多い1)。これは,小児科勤務医の不足する地方における一般病院の小児科医の疲弊にもつながる。わが国の1~4歳の小児の死亡率は,他の先進国に比較して高い2)。その要因として,PICUの不足が考えられている。小児重症患者をPICUで集中治療すると診察成績が改善することが報告されている3)。日本集中治療医学会の調査によれば,先進国と比較して施設数,病床数ともに著しく少ないと指摘されている。
2017年4月,福島県内初のPICUが福島県立医科大学附属病院こども医療センター内に開設された。PICUは外科および内科疾患を問わず,すべての診療部門の小児重症患者を対象とし,また,院外の小児三次救急患者も積極的に受け入れる必要がある。福島県は全国で3番目に面積が広い都道府県であり,交通の便が良いとは言えない。このため,08年よりドクターヘリが運用されており,年間400~500件の要請がある。ドクターヘリと連携することにより,各地域で診療されていた小児三次救急患者をPICUへ集約し,地方の小児科医の負担を軽減することができる。PICUはそれぞれの地域の特性に合わせて枠組みをつくり,運営していくことが重要であろう。
【文献】
1) 桜井淑男, 他:日小児会誌. 2006;110(5):656-62.
2) 田中哲郎:小児救急医療の現状と展望. 診断と治療社, 2004.
3) 武井健吉, 他:日救急医会誌. 2008;19(4):201-7.
【解説】
陶山和秀 福島県立医科大学小児科講師