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(1)切除可能膵癌に対する術前治療─術前治療の是非,どのようなメリット・デメリットがあるか[特集:切除可能膵癌の術前・術中・術後]

No.4926 (2018年09月22日発行) P.28

元井冬彦 (東北大学大学院消化器外科学准教授)

海野倫明 (東北大学大学院消化器外科学教授)

登録日: 2018-09-25

最終更新日: 2018-09-19

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膵癌を切除した患者に術後補助療法を行うことは標準治療として強く推奨されるが,切除企図膵癌を手術先行で治療することが最善とする論拠は乏しい

術前治療には,不顕性転移に対する治療・根治性の向上・症例選択にメリットがある

術前治療には,手術機会の喪失・治療後の手術の安全性に懸念が指摘されており,適切に計画された臨床試験として実施することが望ましい

手術先行にも,手術機会の喪失・不適切症例に対する治療などのデメリットがあり,ランダム化比較試験の結果が待たれる

1. 切除可能膵癌と標準治療戦略

近年,膵癌に対する外科的治療の可能性を分類する目的で,切除可能性分類(resectability)が定義されている。わが国の「膵癌取扱い規約」でも第7版より採用され,遠隔転移の有無および膵近傍の主要大血管との関係から,切除可能(resectable:R)・切除可能境界(borderline resectable:BR)・切除不能(unresectable:UR)に分類される1)。切除可能膵癌とは,解剖学的に(脈管合併切除を伴わない)標準的膵切除でR0切除が期待できる局所進展度であることが,〔主にmulti-detector row-CT(以下,MD-CT)による〕画像で診断される膵癌である。わが国を含め主要なガイドライン〔NCCN2),ESMO3),JPS(日本膵臓学会)4)〕では,手術を先行して根治切除が得られた場合に(術後回復が得られた後に)補助療法を実施することが,切除可能膵癌の標準的治療戦略であることが記載されている。

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