毛包では男性ホルモン受容体と5α-還元酵素は毛乳頭細胞に発現しており,毛母細胞の増殖は毛乳頭細胞からのシグナルでコントロールされている
フィナステリドは前立腺や毛包など限られた組織だけに存在するⅡ型の5α-還元酵素を特異的に阻害することで男性ホルモンの作用を抑制する
デュタステリドはⅠ型およびⅡ型の5α-還元酵素の両方を阻害する
男性型脱毛症診療ガイドラインにおけるフィナステリドとデュタステリドの内服療法の推奨度は,男性ではAであるが女性ではDである
フィナステリドとデュタステリドに即効性はなく,半年以上の内服前後の臨床写真を比較して継続するかどうかを決める
フィナステリドとデュタステリドは生活改善薬としての位置づけであるため自費診療となる
男性型脱毛症は遺伝的素因を有するヒトに,思春期以後に特定のパターンをとって発症する。
男性型脱毛症の発症には遺伝と男性ホルモンが関与することはよく知られている。多因子性優生遺伝と言われてきたが,ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study:GWAS)により13の遺伝子の1塩基多型が相関することが報告されている1)。毛包形成に関わるWntシグナルや男性ホルモン受容体に関わる分子が多い。
毛包では男性ホルモン受容体は毛母細胞などの上皮系の細胞には認められず,間葉系の毛乳頭細胞に局在する。テストステロンをより強力な男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(DHT)へ活性化する酵素である,Ⅱ型の5α-還元酵素も,毛乳頭細胞に発現している。
一方,Ⅰ型の5α-還元酵素の発現は非特異的で,すべての毛包細胞に発現している。男性型脱毛症の前頭部毛包では,男性ホルモン刺激で毛乳頭細胞より誘導されるTGF-βやDKK1が毛包角化細胞の増殖を抑制し,成長期を短縮させることが明らかにされている(図1)2)。