人口動態統計によると、昨年の死亡総数は134万397人。心疾患による死亡数は20万4837人で、死亡総数の約15%に及んでいる。また、厚生労働省の「2016年度国民医療費の概況」によると、医科診療医療費の総額30兆1853億円のうち、循環器疾患が約20%を占めている。心不全による入院患者数が、2012年から16年まで毎年1万人ずつ増加しているという日本循環器学会の調査もある。心不全患者は高齢者が多いため、団塊の世代に次いで人口の多い団塊ジュニア世代が高齢者となる35年をピークに、患者数・死亡者数増加、医療費増大、病床不足、医師不足などで医療体制が疲弊する「心不全パンデミック」に陥ると危惧されている。
こうした事態を受け、厚労省は16年6月、「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会」を設置。検討会報告書では、慢性心不全患者の約20~40%が1年以内に再入院する現状を踏まえ、急性期から回復期・維持期までの一貫した診療提供体制の構築や、地域全体で慢性心不全患者を管理する体制の必要性を明記した。今年度から始まった第7次医療計画では、従来5疾病として規定されていた「急性心筋梗塞」を「心筋梗塞等の心血管疾患」と見直し、心不全等の合併症を含めた医療提供体制の構築を推進している。
関係学会も危機感を示している。日本脳卒中学会と日本循環器学会が16年に発表した「脳卒中と循環器病克服5カ年計画」では、心不全を重要疾病に選定。「心不全対策を我が国の医療の中心的政策課題として位置づけるべき」と訴えた。
さらに今年5月、循環器領域の専門医で構成する横断的組織「心臓病医療を考える会」が提言を発表。心不全パンデミックに対応し、地域の医療体制を崩壊させないために、①多職種連携の実現、②緊急の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は地域の一般急性期病院で対応、③難度の高い心臓病医療は高度急性期病院に集約、④心不全認定看護師の育成、⑤心不全の緩和ケアの一般への啓発と実施可能な施設の増設―などの改革を求めた。