【病変部位に応じて十二指腸温存膵頭切除術,膵中央切除術,中央区域温存膵切除術などを使いわける】
膵臓は内・外分泌機能を有する後腹膜臓器である。従来,膵臓に対する手術は,頭部病変に膵頭十二指腸切除術,体尾部病変に膵体尾部切除術,全体病変に膵全摘術が施行されてきた。しかし,その一方で術後の膵機能低下が問題となっている。これらを改善すべく,多くの外科医により術式の改良がなされてきた。
現在では,医療機器の進歩も相見えて,良性疾患のみではなく低悪性度腫瘍においても,膵機能や臓器を温存する術式が行われるようになった。筆者らの施設では,1990年より13Cトリオクタノイン呼気試験を行い,膵切除後の膵機能を評価し,定型的な膵切除術に比して各種臓器・機能温存術式の有用性を示した。頭部病変では十二指腸や胆管を温存する十二指腸温存膵頭切除術1),体部病変では頭部と尾部を温存する膵中央切除術2),頭部や尾部に離れて存在する病変では体部のみを温存する中央区域温存膵切除術3)などの術式を施行している。膵切除後には各種の重篤な合併症が懸念されるが,術直後だけでなく,長期的な合併症に目を向け,QOLを重視した体に優しい膵切除術が望まれる。
【文献】
1) Horiguchi A, et al:J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2010;17(6):792-7.
2) 堀口明彦, 他:膵臓. 2009;24(2):164-9.
3) Horiguchi A, et al:Hepatogastroenterology. 2011;58(107-8):1018-21.
【解説】
浅野之夫*1,守瀬善一*2,堀口明彦*3 *1藤田医科大学ばんたね病院外科・小児外科講師 *2藤田医科大学総合消化器外科教授 *3藤田医科大学ばんたね病院外科・小児外科教授