せん妄発症率を低減するためには,「効果的なケア方法を提示すること」「看護スタッフへの教育」「多職種との協働による介入」などが重要であり,せん妄ケアシステムとして構築し活動していくことが必要である
「せん妄予防ハイリスクケア」「せん妄ケア」の熟練した看護ケアを標準化することで,すべての看護師や医療者が理解し,実践できるようなケアマニュアルや教育プログラムに反映できる
「せん妄予防ハイリスクケア」「せん妄ケア」を実施しながら医療の質(QI)指標を選定し,時系列で結果を確認することが改善につながっていく
せん妄は,入院患者に高頻度にみられる疾患であり,患者の回復過程を遅延,身体状況を低下させ,医療者のケアに対する困難感を増幅させる。発症すると失見当識や昼夜逆転などで落ち着かなくなり,治療やケアへの協力が得られにくい状態となることが多い。
せん妄はその発症を予防するケアの実践が不可欠であり,多くの急性期病院で多職種チームを立ち上げて組織化するプロセスを踏み,ケアによる改善を試みている実態などが報告されている。また,せん妄発症率を低減するためには,「効果的なケア方法の提示」「看護スタッフへの教育」「多職種との協働による介入」などが必要であるとされている1)。さらに,看護スタッフへの教育による予防的ケアの実践と多職種チーム活動による介入のアウトカムの確認,医療の質(quality indicator:QI)指標の選択と決定も改善策へとつながっていく。
今回は,当院のせん妄ケアシステムの概要とQI指標を活用した看護部活動について報告する。
当院は救命救急センターを持つ急性期病院であり,病態の重症度により,入院時からすでにせん妄を発症している,または複雑な病状により,せん妄リスク因子を多数持つ患者が多い。重症患者に合併する,せん妄に関連するインシデント報告が増加したことから,2014年11月に院内プロジェクトとしてせん妄関係者会議を行い,2015年4月に「一般病棟入院患者せん妄予防アルゴリズム」(図1),「せん妄対応アルゴリズム」(図2)を作成して運用を開始している。