【肝細胞癌においても免疫チェックポイント阻害薬の効果が報告されている】
生体の免疫システムには,免疫チェックポイントと呼ばれる,自己への不適切な免疫応答や過剰な炎症反応を抑制する機能がある。免疫チェックポイントを担う分子としてPD-1やCTLA-4などの抑制性受容体が挙げられる。免疫チェックポイント阻害薬は抑制性受容体もしくはそのリガンドに結合して,免疫系のブレーキを解除することによって腫瘍に対する免疫応答を高め,腫瘍排除効果をもたらす。
進行肝細胞癌に対する抗PD-1抗体であるニボルマブの第1/2相臨床試験(CheckMate 040)の結果では,dose escalation phaseで安全性と忍容性の検討から3mg/kgの至適用量となった。dose expansion phaseでは,214例を対象として治療効果はCR 3例,PR 39例,SD 96例で,奏効率20%,病勢制御率64%であった。奏効期間の中央値9.9カ月,無増悪生存期間中央値4.0カ月で,9カ月生存率は74%であった1)。現在,切除不能な進行肝細胞癌に対する一次治療として,標準治療薬であるソラフェニブを対照としたニボルマブの第3相比較試験が進行中である。
免疫チェックポイント阻害薬投与により免疫調整が正常に機能せず,自己免疫疾患や炎症性疾患様の副作用が発現し,免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれている。全身に障害を起こすことが報告されているために,これまでのがん薬物療法の副作用とは異なる観点からの対応と管理が望まれる。
【文献】
1) El-Khoueiry AB, et al:Lancet. 2017;389(10088): 2492-502.
【解説】
川崎 剛,佐々木 裕* 熊本大学消化器内科 *教授