アルコールや覚醒剤、危険ドラッグから脱け出せない患者たちを「よく来たね」と迎え、「また来てね」と握手して帰す。そんな成瀬さんの外来は「ようこそ外来」の異名を持つ。
ミーティング形式の治療プログラムでは、再び薬物に手を出した患者がいても決して責めず、正直に話せたことを称え「おめでとう」と拍手を送る。プログラムに出た患者にはシールや賞状を渡す。「50代の男性でもシールをもらう列に並びます。小さなご褒美が治療継続の動機づけになるのです」。9カ月間のプログラムで約6割が薬物をやめるという。
薬物依存症患者の多くは成育環境に問題があり、「人を信じられない」「見捨てられたくない」といった悩みを抱える。「だからこそ心を開いてもらえる環境づくりが大切です。『北風と太陽』の北風のように薬物を引き剝がすのではなく、太陽のように居場所と安心感を提供する。それが依存症治療と考えています」
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