うつ病はアルツハイマー型認知症(AD)発症のリスクファクターとされており,抑うつ,不安症状はアミロイドβ負荷の増大を反映し,AD発症の前駆期を早期診断する臨床的マーカーとなりうる
うつ病およびADの病態に,神経炎症,特にミクログリアの活性化が関与すると示唆されるが,加齢によるミクログリアへの影響にも着目することが重要である
うつ病とADの共通病態として脳由来神経栄養因子(BDNF)機能の低下(BDNF仮説)も注目されている
アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:AD)の患者数は2030年には世界で7000万人を超え,そのglobal costは2兆ドルにおよび,がんや糖尿病をはるかに上回ると推計されている1)。
ADでは認知機能が低下しはじめる少なくとも15年前に老人斑(amyloid-β plaques)が出現するとされ,老人斑の主成分であるアミロイドβ(amyloid-β:Aβ)の凝集を早期に発見し,かつAβの凝集を防ぐことが根本的治療法(disease-modifying therapy)と考えられている1)。
うつ病はAD発症のリスクファクターであると以前から報告されている2)。
しかし,近年のamyloid positron emission tomography(PET) imagingを用いた研究では,地域在住の健常高齢者において,大脳皮質にAβが沈着している人ほど孤独感や寂しさを強く感じており3),その後の経過においても抑うつ症状がより増悪すると報告された4)。
これらの報告は抑うつ,不安症状が脳へのAβ負荷の増大を反映しており,AD発症の前駆期を早期診断する臨床的マーカーとなりうる可能性を示唆している。