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抗癌剤治療に伴う脱毛における頭皮冷却時機の到来

No.4945 (2019年02月02日発行) P.52

荒木和浩 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科准教授)

三好康雄 (兵庫医科大学乳腺・内分泌外科教授)

登録日: 2019-02-02

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【脱毛を軽減】

早期乳癌に対する乳房切除は標準的治療であるが,乳房喪失は非常に切実な問題である。さらに,抗癌剤治療に伴う脱毛は,乳房喪失と同様に精神的な苦痛が大きい。早期乳癌における補助化学療法は,10年後の再発リスクを35%抑える。しかしながら,悪心・嘔吐,感染症などの様々な副作用に加えて脱毛はQOLに大きな影を落とす。

頭皮冷却装置による2つの臨床試験で抗癌剤治療に伴う脱毛の抑制が確認された1)2)。その装置とはDigniCap®とPaxman Scalp Coolerである1)2)。前者は,補助化学療法をされた122症例を対象とする前向きコホート試験である(106症例に対して頭皮冷却装置を使用)1)。冷却装置使用症例のうち67例は50%以下の脱毛であった(66.3%,95%CI;56.2~75.4%)1)。一方,冷却装置を使用しなかった16例では50%以上の脱毛が全症例で認められた(P<0.001)1)。QOL調査票でも冷却装置使用群で良好な結果であった1)。同様に後者の試験でも異なる冷却装置で良好な成績を得ている(フィッシャーの正確確率検定にてP<0.001)2)

冷却処置は頭皮の血管を収縮させ,毛根細胞への抗癌剤の曝露量を減らす。冷却により毛根細胞自体の活動も低下し,抗癌剤の影響をより受けにくくすることで,脱毛を軽減させる。わが国での導入にあたっては保険収載や,冷却時間に関する外来化学療法室の管理(通常の抗癌剤治療時間を超過するため)など解決すべき問題がある。頭を冷やして考えねばならない。

【文献】

1) Rugo HS, et al:JAMA. 2017;317(6):606-14.

2) Nangia J, et al:JAMA. 2017;317(6):596-605.

【解説】

荒木和浩*1,三好康雄*2  兵庫医科大学乳腺・内分泌外科 *1准教授 *2教授

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