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【OPINION】新しい内科専門医研修を考える─「主治医診療能力」後期研修プログラムの提案

No.4755 (2015年06月13日発行) P.12

加藤誓子 (JA愛知厚生連豊田厚生病院内科(写真))

田中孝正 (北野病院総合内科)

久保田英司 (静岡赤十字病院内科部長)

森田浩之 (岐阜大学大学院医学系研究科総合病態内科学分野教授)

村山正憲 (松波総合病院副院長・内科部長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-17

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  • はじめに

    2017年度からスタートする新しい専門医制度に向けて、日本内科学会は2014年12月、新内科専門医制度の概要を発表した。15年以降の医師国家試験合格者を対象とする新内科専門医制度は、これからの日本の内科医の有様を決定することとなり極めて重要な制度である。
    今日の内科診療は臓器別内科個別診療の集まりでしかない。専門臓器に関わりなく患者の病気の全体を捉え、診療統括者として責任を持って適切な診療を行う「主治医診療」がいま求められている。臓器別内科医も主治医の姿勢と能力が必要とされることは言うまでもなく、そのための最低限の主治医診療能力の獲得は新内科専門医に必須といえる。
    主治医診療とは「患者にある全ての病気を認知して、診療統括者として主治医が方針・計画を責任をもって決定し実行する」という診療である。同じ疾患を有していても個々の患者における病気の有様は同じではなく、ましてや他の病気が併存している場合はなおさら異なるため、まずはその患者固有の病気の有様を正しく理解しなくてはならない。
    これを理解するには、正確かつ適切な診療情報(病歴・過去資料・身体所見・検査画像所見)と一般医学知識を基に、患者における病態生理を考察することが必要である。その上で、診療統括者としてそれぞれの病気についての計画を立案し、実行する。
    ここで、患者診療には臓器別内科固有の診断治療技術が数多く必要とされるが、これらすべてを主治医単独で実施することは求めていない。現代の医学診療においてそれは不可能である。主治医が行うのは、それら診断治療技術を行うと決定することである。行う目的を明確にし、実施者・実施時期・実施方法等を決定する。この判断に必要な知識や経験が臓器別内科にしかないのであれば、必要に応じて知識や助言を求め、場合によっては実施を委託する。
    新専門医制度では「総合診療専門医」が新設される。これは真の家庭医・かかりつけ医を目指していると思われるが、家庭医・かかりつけ医が患者の持つ病気全体を捉えて望ましい診療をしたとしても、入院した途端に従来の臓器別内科個別診療を行うのでは新制度として齟齬がある。病院では新内科専門医による主治医診療が適切になされることが求められ、それが新制度の根幹であろうと考える。
    そこで本稿では、主治医診療能力を備えた新内科専門医を目標とした育成プログラム案を提示する。

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