数々の自然災害を経て進化した災害医療のこれまでと今後の課題を日本災害医学会代表理事の小井土雄一氏に聞いた。
昭和の時代は、1959年(昭和34年)の伊勢湾台風以降は幸いなことに日本で大きな自然災害がほとんど起きなかったため、日本の災害医療の歴史は国際支援から始まっています。79年にタイに集まったカンボジア難民に対して世界各国が医療支援チームを派遣し、日本も、今では災害医療の父といえる山本保博先生(東京曳舟病院長)が第一陣で支援に入りました。その後も国際災害への支援を続けてノウハウを積み重ねていた中、95年1月17日、阪神・淡路大震災が発生しました。この教訓をもとに、初めて国全体で災害医療体制を構築することになるのです。
1.17の教訓は災害医療における超急性期対応の重要性です。この経験を踏まえ、災害拠点病院が整備され、災害急性期の医療を担うDMAT(災害派遣医療チーム)が創設され、広域医療搬送計画や広域災害救急医療情報システムが作成されました。日本災害医学会の創設も1995年です。