2024年4月から、勤務医にも改正労働基準法による時間外労働規制が適用される。上限時間数の設定とともに、医師の健康確保措置が強化され、医療機関にとって今まで以上に産業医の重要性が高まることになる。医療機関の産業医が心得ておくべきポイントは何か。東邦大佐倉病院産業精神保健・職場復帰支援センター長の小山文彦教授に話を聞いた。
医師の働き方改革では、国が勤務間インターバルの確保やタスクシフティングを進めるという方向性を打ち出していますが、そうした対策はスタッフの多い都会の大病院ではできても、地方の総合病院などでは現実的に困難です。しかし、医療機関の規模や地域を問わず、健康状態の悪化やストレスの要因となるものを取り除き、対処していくことが重要です。
最も基本的なことは、精神作業疲労の蓄積をいかに避けつつ働くか。生物学的視点では睡眠衛生と過重労働対策に尽きます。過重労働と睡眠不足が続くと、コルチゾール分泌が亢進して生活習慣病のリスクが高まり、さらに前頭葉機能に影響が及べば、うつ病の発症を招きます。産業医は睡眠と休養の重要性を教育し、職員に向けて、健診で不整脈や体重増加等の所見の乱れが出たら健康相談へ来るよう呼び掛けるべきです。
また、医療従事者の中でも医師は自己解決しようとする傾向が強く、それがメンタル不調に陥る要因ともなっています。多忙ゆえに業務以外の話をする時間を持とうとしない、あるいは持てない状況は多々見受けられます。
日本の医療現場にはまだ十分浸透していませんが、産業医が率先してレジリアンス(心の弾力性)の概念に着目した心理教育の重要性を説き、職場環境にポジティブな変化を促すべきでしょう。