(鹿児島県 Y)
【その年限りで祝日化した日は労基法上の休日ではなく,病院が出勤日としても違法ではない】
「天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律」により即位の日である5月1日が祝日とされました。そして,「国民の祝日法」により「その前日及び翌日が『国民の祝日』である日は,休日とする」とあることから,祝日に挾まれた日も休日とされているため,5月1日の前後の4月30日と5月2日がこれに該当して休日となり,10連休となると言われています。
国民の祝日を,日曜日と同じように休日とする企業も多いのですが,労働基準法(労基法)上は休日ではありません。すなわち,「国民の祝日に関する法律は,国民の祝日に休ませることを強制的に義務づけをするのではなく,労働基準法は,毎週1回又は4週4日以上の休日を与えることを義務づけているが,この要件を満たすかぎり,国民の祝日に休ませなくても労基法違反とはならない」と通達(昭41・7・14基発第739号)されています。
したがって,祝日は労基法上は休日ではなく,祝日の労働は休日労働にはなりません。すなわち,労基法上は通常の労働日となり,その日に労働しても割増賃金の規定の適用はなく,通常の労働日です。そこで,国民の祝日をその事業場の休日にするかどうかは原則として企業の自由であり,就業規則の定めるところによります。
貴病院の就業規則で祝日を日曜日などと同じように休日としている場合,この祝日に今年の例外的な4月30日と5月2日という,本来は祝日ではない5月1日が今年限りの偶発的な祝日となったがゆえの2日間も加わって,祝日だから当然休日になるとしてゴールデンウィークの期間が10連休となるのか。それともこの取り扱いは,今年限りの臨時的・例外的なもので,例年と異なる就業規則上の「祝日」や「関連休日」の取り扱いは,法定労働条件ではないため従来通りの出勤日とするか否か。これは各事業場の取り扱いによります。というのはこの2日間は本来の祝日ではなく,労働条件として明示し,病院側があらかじめ定めている恒例的な祝日でもないからです。
なお,これらの日を祝日とする法律を審議した国会の附帯決議では「国民生活に与える様々な影響への懸念も生じているので,国民生活に支障を来すことのないよう,適切な設置を講ずるべきである」とされており,国民生活上の影響を懸念して,様々な対応が要請されている状況ですので,今回の病院の取り扱いが従来の労働条件に比べ従業員に不利益を与える不当なものであるとも言えないと考えられます。
そこで,病院の対応として,4月30日と5月2日を従来通り通常の所定労働日(出勤日)と決定したときは,従来通り労働義務のある勤務日のままとなりますから,職員がその日に休む場合には,病院としての特例の定めがない以上は,就労義務の免除を求める年次有給休暇を申請することになります。
いずれにしても,今年限りの本来の労働条件ではない,臨時的で特別なケースですから,事業場の定めによります。
【回答者】
安西 愈 弁護士