「痛み止めを服用すると、おしっこが出にくくなるので、必要なとき以外は使わないで下さいね」
循環器外来の心不全患者さんに、私がいつも言い続けているフレーズです。
高齢者人口が年々増え続けており、2025年には75歳以上の高齢者が総人口の30%を超えると言われています。私たちが診療でしばしば遭遇する「心不全」はその高齢者に非常に多い病気です。また同時に「腰痛症」や「膝関節痛」「骨粗鬆症による骨折」などの運動器疾患が多いのも高齢者の特徴です。したがって、心不全の患者さんが運動器疾患に罹患し、痛み止めの使用が増えるのも当然の成り行きということです。
ここで言う「痛み止め」とは、正確に言うとnon-steroidal anti-inflammatory drugs(NSAIDs)のことです。NSAIDsの持続的な使用は腎血流を低下させ、心不全増悪の誘因となりやすいのです。
当院は、山口県中央部にある総合病院で、三次救急病院であるため、心不全だけでなく交通外傷や整形外科疾患の救急患者も多く搬送されて来ます。整形外科では、「大腿骨頸部骨折」や「変形性膝関節症」などの先進的な低侵襲手術を実施しています。高齢者の運動器疾患の最後の砦とも言うべき専門家集団であり、山口県内だけでなく中国地方の各地から患者さんが集まってきます。
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