血管肉腫は,血管およびリンパ管由来の悪性軟部腫瘍の総称である脈管肉腫とほぼ同義であり,日常臨床で頻用されている。高齢者の頭頸部に好発する(angiosarcoma of the scalp and face)。長期間のリンパ浮腫に伴い生じることがあり,これをStewart-Treves症候群と呼ぶ。また,稀に放射線治療後に生じることがある。年間罹患数は80~160人程度と,非常に稀な疾患である。疾患全体の5年生存率は約10%,平均生存期間は19.5カ月程度とされ,予後が悪い。再発を繰り返す症例では局所の制御にもしばしば難渋し,患者のQOLを著しく低下させる。
境界不明瞭な紫斑,暗赤色~紫色の易出血性の結節・腫瘤を呈する。血疱を伴い,潰瘍化することも多い。高齢者の頭頸部型では,頭部外傷の既往があることもある。
病理組織学的には,多数の赤血球の血管外漏出と腫大した異型血管内皮細胞の増殖がみられる。不整な管腔構造を呈し,内腔側に突出する大型の異型細胞が認められる。免疫染色では,血管内皮細胞のマーカーであるCD31,CD34,第Ⅷ因子抗原,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)などが陽性を示す。また,リンパ管内皮細胞のマーカーであるD2-40にも陽性を示すことがある。
病初期から転移をきたすことが多いため,CTやPETを用いた全身検索を行うことが肝要である。特に肺あるいは胸膜に転移を起こしやすく,血気胸を伴いやすい。
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