【質問者】
大鳥精司 千葉大学大学院医学研究院整形外科学教授
【AISの保存療法として装具療法の有効性が高いエビデンスレベルで証明された】
AISは,遺伝因子と環境因子がその発症や進行に関与する多因子遺伝疾患と考えられているが,その詳細は長らく不明でした。
近年,ゲノム研究技術が進歩し,ゲノム全体を網羅的に解析するゲノムワイド相関解析(Genome Wide Association Study:GWAS)によってAISの発症に関与する遺伝子が明らかにされました。筆者らの研究グループは約6000名のAIS患者のDNA解析を行い,脊髄や骨格筋に発現するLBX1(lady bird homeobox 1),軟骨組織に発現するGP R126(G protein-coupled receptor 126),筋肉,子宮,卵巣に発現するBNC2(Basonuclin 2),脊椎・脊髄,骨格筋に発現するPAX1(Paired Box 1)などの遺伝子を同定しています。これらの遺伝子は国際コンソーシアムにおけるメタ解析(各研究グループの解析結果を統合して統計解析を行う)により再現性が確認されました。
また,AISの治療時には進行予測が重要であり,米国では進行予測用の遺伝子検査パネルScoliscore®が臨床応用されています。しかし,本検査は日本人には適応がないことから,筆者らはGW ASにより進行に関与する遺伝子の同定を行いました。その結果,性分化や軟骨細胞の分化に重要なSOX9や精巣に発現するMIR4300HG(Micro RNA 4300 host gene)などが重症患者で有意に高頻度に発現していることを見出し,今後の進行予測への応用を検討しています。
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