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胸郭出口症候群[私の治療]

No.5237 (2024年09月07日発行) P.46

佐竹寛史 (山形大学医学部整形外科学講座病院教授)

登録日: 2024-09-08

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  • 腕神経叢と鎖骨下動脈は前斜角筋と中斜角筋との間,鎖骨と第1肋骨との間を走行する。この部位で神経血管束が絞扼や牽引を受け発症するものを胸郭出口症候群(thoracic outlet syndrome:TOS)と言う。多くは上肢挙上動作で上肢のしびれ,痛み,あるいは脱力感を生じる。

    ▶診断のポイント

    問診で注意深く,症状が出る姿勢や肢位を聴取することが重要である。肩外転外旋動作による誘発テストが診断に有用であり陽性になる場合が多いが,偽陽性も多いため注意が必要である。肩を外転し,外旋を強めていくと橈骨動脈の拍動が消失したり,手の色調が蒼白になったりする症例があり,この場合は血行障害によるTOSと診断できる。

    超音波検査で前斜角筋と中斜角筋の第1肋骨停止部間距離(斜角筋間距離)に狭窄があるかどうか,安静位と上肢挙上位における鎖骨下動脈に血流変化があるかどうか,あるいは挙上位造影CTで肋鎖間隙や鎖骨下動脈に狭窄像があるかどうかにより診断する。斜角筋間距離は,解剖学的研究から平均10.7mmと報告されており1),この値を参考に狭窄の有無を評価する。体格の差も考慮する。鎖骨下動脈血流変化の定義は明確にされてはいないが,挙上により明らかに低下したり,逆に加速血流がみられたりする場合があり,診断の補助とする2)。肋鎖間隙は上肢挙上位CT矢状断像で,健常人において平均12.4mmと報告されており3),この値を参考に狭窄の有無を評価する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    TOSの多くはリハビリテーションによる保存療法で軽快する。しかし,若年者では解剖学的に斜角筋間や肋鎖間隙に狭窄像が確認されることがあり,手術適応になる場合が多い。保存療法に抵抗する症例やスポーツに支障をきたしている症例では手術が望ましい。

    【治療上の一般的注意】

    画像で他覚的異常所見をとらえられない症例に対して手術は行わないほうがよい。問診や誘発テストのみが陽性である症例への手術は慎重に行うべきである。X線やCTで頸肋がみられるか,超音波や造影CTで異常所見が確認された場合に手術を検討する。

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