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膵癌に対するCAR-T療法の展望について

No.4961 (2019年05月25日発行) P.56

堀口明彦 (藤田医科大学医学部消化器外科学講座教授/ばんたね病院消化器外科)

須磨崎 真 (東邦大学大学院臨床腫瘍学講座)

島田英昭 (東邦大学大学院消化器外科学講座教授・臨床腫瘍学講座教授)

登録日: 2019-05-24

最終更新日: 2019-05-21

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  • 近年,膵癌の成績は術前術後補助化学療法の進歩により向上しましたが,いまだ消化器癌において最も予後不良です。近年,キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法が,がん免疫療法のブレイクスルーのひとつとして高い注目を集めています。しかし,血液がんには著明な治療効果を発揮する一方で,固形がんに対する効果は得られていません。
    そこで,膵癌に対するCAR-T療法の展望について,東邦大学・島田英昭先生にお伺いしたいと思います。

    【質問者】

    堀口明彦 藤田医科大学医学部消化器外科学講座教授/ばんたね病院消化器外科


    【回答】

    【CAR遺伝子改変技術の革新と腫瘍微小環境における免疫抑制系の克服が必要】

    キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)とは,T細胞受容体に遺伝子改変技術を施した合成受容体であり,キメラ抗原受容体T細胞療法をCAR-T療法と呼びます。CAR- T療法では,患者末梢血から採取したT細胞を遺伝子改変・増殖した上で患者に輸注します。CARを発現させたT細胞は,抗原特異的な免疫反応だけでなく機能・代謝も再構築されて強い増殖能を有するため,メモリーT細胞の形質を示すCAR-T細胞が末梢血中に生着し,腫瘍の再発抑止効果があると考えられています。従来予後不良であった再発・難治性B細胞性急性リンパ性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)を対象としたELI ANA試験では,CD抗原(cluster of differentiation antigen:CD)19を標的とした新薬CTL019は,評価可能な79例のうち,輸注後3カ月以内に82%が奏効を達成,24カ月時点の無再発生存率は62%となり,CAR-Tが根治治療となる可能性が示されました。これを受けて米国ではtisagenlecleucel(CTL019)が,2018年に再発・難治性のB細胞性ALL・びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma:DLBCL)に対する治療薬として米国食品医薬品局(US Food and Drug Administration:FDA)に承認されました。

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