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バロキサビル(ゾフルーザ)を季節性インフルエンザ治療に使うことはできない[提言]

No.4962 (2019年06月01日発行) P.56

菅谷憲夫 (神奈川県警友会けいゆう病院感染制御センター長・小児科)

登録日: 2019-05-29

最終更新日: 2019-05-28

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  • 〔要旨〕季節性インフルエンザをバロキサビルで治療すると高率に耐性が発生することは治験段階で明らかであった。さらに今シーズン,実際に臨床で使用され,高率に耐性が発生し,耐性ウイルスが感染することも実証された。バロキサビルで治療したB型の小児では,耐性がないにもかかわらず,高率に再発熱がみられ用量不足が示唆された。現在,小児で,高用量の治験が実施されている。バロキサビルは季節性インフルエンザの外来治療に適した抗インフルエンザ薬ではなく,オセルタミビルやラニナミビルの代わりに使用すべきではない。ノイラミニダーゼ阻害薬と併用し,耐性を抑えて,入院重症例あるいは新型インフルエンザ感染例での治療効果が期待される薬剤である。

    2018-19シーズンは,2つのA型インフルエンザ,H1N1pdmとA香港型インフルエンザ(H3N2)による大規模な混合流行となった。その流行下,バロキサビル(ゾフルーザ)は大きな注目を集め,500万人以上の患者に使用されたと考えられるが,耐性ウイルスの出現頻度から考えると,A型インフルエンザ患者のうち数十万人からバロキサビル耐性ウイルスが発生したと思われる。

    日本のインフルエンザ診療体制は,WHOをはじめ世界で高く評価されている1)。世界の専門家は,日本のインフルエンザ早期診療体制が2009年のH1N1パンデミックでの驚異的な低死亡率の主因であると認識している。日本のインフルエンザ早期診療体制も,ほとんど耐性が出ていないからこそ高く評価されているのであり,耐性ウイルスが頻発するのであれば,それは世界に拡散するので厳しい批判の対象となるであろう。そのため,バロキサビルにおける高率の耐性ウイルス検出は,日本のみならず世界的にも看過することのできない重大な問題である。

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