【データベースを利用した臨床研究が発展】
胸腺上皮性腫瘍は,胸腺腫・胸腺癌・神経内分泌腫瘍に分類され,胸腺腫が8割以上を占める。京都大学呼吸器外科は,ハイボリュームセンターの特性を生かして,胸腺上皮性腫瘍等を含めた縦隔腫瘍の経験症例・研究経験も多く,その中でも最近の知見を述べる。
術後補助療法については,2015年に日本胸腺研究会のデータベースを利用して行われた臨床研究により,胸腺癌の完全切除後に術後放射線治療を行うことで,無再発生存期間が延長することが示唆された1)。ただし,胸腺腫の完全切除後には明らかな効果はみられなかった。そのデータに基づいて,当科でも呼吸器内科・放射線治療科とのスムーズな連携をとって,胸腺癌の切除後には放射線治療等を行っている。
また18年,当科のデータに基づいた臨床研究により示唆されたのは,胸腺腫の完全切除後は,一般的に5年以上の経過観察が必要で,再発に対して留意しておくことが重要であり,それと同時に第2悪性腫瘍の出現にも留意する必要がある,ということである2)。その結果を検証するべく,現在,多施設のデータベースおよび日本胸腺研究会のデータベースを利用した臨床研究を行っている。
胸腺上皮性腫瘍の治療および管理にはまだまだ発展の余地があるため,今後の研究の動向に注意することが必要である。
【文献】
1) Omasa M, et al:Cancer. 2015;121(7):1008-16.
2) Hamaji M, et al:Asian Cardiovasc Thorac Ann. 2018;26(4):290-5.
【解説】
濱路政嗣 京都大学呼吸器外科講師