厚生労働省は5日、「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」(座長=城内博 日大理工学部特任教授)の初会合を開いた。同会議には、安全衛生、予防医学、老年医学の専門家や労働者の代表らが構成員として参画。政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2019」で、全世代型社会保障を実現するための改革の第一に「70歳までの就業機会確保」を掲げたことを受け、主に60歳以上の労働者の労災防止や身体機能向上の方策について検討する。年度内に議論を集約し、ガイドラインを作成する。
総務省の労働力調査によると、全労働者に占める60歳以上の割合は2018年時点で17.2%に達している。政府は来年の通常国会に、希望者が70歳まで働ける雇用環境の整備を企業に求める高年齢者雇用安定法改正案を提出する方針で、高年齢労働者はますます増えると予想される。
一方で、厚労省によると、18年における休業4日以上の死傷災害の4分の1以上(26.1%)は60歳以上となっており、30歳前後と比較した70歳前後の災害発生率(1000人当たり)は男性で約2倍、女性で約5倍。災害の種類では、加齢に伴う身体機能の低下と関連する転倒や転落が多く、安全と健康の確保が若年層以上に求められている。
5日の初会合では、高年齢労働者の安全と健康確保の先進事例として、独自の筋力測定法を開発・実践しているJFEスチールなどの取り組みが紹介された。構成員からは、「中小・零細企業でも実践できる方策を国として示すべきだ」「健康診断における高齢労働者の有所見率と未受診率の高さにも注目すべきだ」といった意見が出た。
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