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【論点】メタボ予防とフレイル予防,どちらを強調するか

No.4972 (2019年08月10日発行) P.60

飯島勝矢 (東京大学高齢社会総合研究機構教授)

登録日: 2019-08-07

最終更新日: 2019-08-06

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Bを選びます。超高齢社会を迎えるにあたっての虚弱化対策において「フレイル予防」という新しい概念が出てきました。すなわち,高齢者の食の安定性を軸として,低栄養対策を改めて再考するときがきています。従来のカロリー制限を軸とするメタボ予防の考え方から,積極的なカロリー摂取を軸とするフレイル予防の概念に徐々に切り換えていくことが必要です。

1 「フレイル」を軸としたパラダイム転換

ヒトは加齢とともに心身の機能が低下し,日常生活活動や自立度の低下を経て,要介護状態に至る。国民への予防意識を高めることを狙い,2014年に日本老年医学会から「フレイル(frailty:虚弱)」の概念が提唱された(図1)。これには以下の3つの要素が不可欠である1)

①中間の時期:健康な状態と要介護状態の中間地点
②可逆性(reversibility):しかるべき適切な介入により機能を戻すことができる
③多面的:身体の虚弱(フィジカル・フレイル)だけではなく,図1右上に示すように,こころ/認知の虚弱(メンタル/コグニティブ・フレイル),および社会性の虚弱(ソーシャル・フレイル)が存在する

サルコペニア(筋肉減弱症)を中心として,負の連鎖(フレイル・サイクル:frailty cycle)が存在する2)。サルコペニアが若干進行すると安静時代謝が減り,消費エネルギーも減ることから,食欲(食事摂取量)低下に傾き,低栄養や体重減少に陥っていき,以下のサルコペニアの進行を促すという,いわゆる負の連鎖を示している。そこに,社会的問題(独居,閉じこもり,貧困等)や精神心理的問題(認知機能障害や抑うつ等)も大きく関わってくる。この負の連鎖をいかに,より早期から断ち切れるのかが大きな課題である。

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