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【書評】こどもの敗血症の実践的な良書

No.4974 (2019年08月24日発行) P.64

齋藤昭彦 (新潟大学大学院医歯学総合研究科小児科学分野教授)

登録日: 2019-08-21

最終更新日: 2019-08-20

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敗血症の概念はこの数年で大きく変わり、小児領域でもその流れを受け、診療の中で変化が起こっている。子どもの敗血症は、外来・病棟を問わず、いつでも出会う可能性のある疾患であり、瞬時の判断が目の前の子どもの予後・死亡率を大きく変えるだけに、我々小児科医は、最新の情報をもって、患者に向き合う責任がある。

本書は、子どもの敗血症の様々な側面に対して、米国・カナダで小児の臨床研修の経験がある小児科医が真正面から取り組んだ画期的な書である。著者のリストを見ると、まさに今、米国・カナダの現場で大活躍している、あるいは研修を終え国内外で大活躍している豪華な顔ぶれである。また、私が米国滞在中に海外臨床留学の指南をした先生方の名前もあり、うれしいと同時に、時の流れを感じる。

敗血症の教科書となると、どうしても概論的な内容になりがちで、現場での問題が伝わりにくい。本書では、タイトルの「結局現場でどうする?」にあるように、実症例への対応について話を進めており、きわめて実践的である。また、レイアウトに余裕があり、図表が多く、大変読みやすい。各章の最後には数行のまとめのメッセージがあり、要点が記憶に鮮烈に残る。さらには、文献による裏打ちがしっかりとされていて、重要な文献にはその要旨もまとめられている。どの章でも、この一貫したスタイルが踏襲されていて、編集者の苦労が読み取れる。

編著者である佐々木潤先生は、マイアミ小児病院の小児集中治療室(PICU)の指導医で、この領域の若手リーダーであり、また、海外での小児科臨床研修をサポートするメーリングリストを立ち上げ、つながりをつくってくれている。その中で生まれた本書には、米国・カナダの小児病院での臨床医としての経験を持つものが知り得る幅広いものの見方、考え方が詰まっている。

私が米国のPICUで研修医として働いたのは、もう20年前になるが、その当時の緊張感はいまだに忘れることができない。PICUにおいて、敗血症患者の診療は、最も重要な疾患の1つであり、本書はタイトルにある通り、現場の“ピリピリ感”を感じさせてくれる良著である。多くの小児科医、初期研修医に読んでもらい、小児の敗血症の奥深さを知ってもらいたい。

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