高次脳機能障害は,病気や外傷による記憶障害,注意障害等の認知障害であり,日常生活や社会生活に支障をきたすことが多い。最初の治療にあたった病院やその後のリハビリテーションを行う病院で診断されることが多く,かかりつけ医が初めて診断することは少ないだろう。しかし,高次脳機能障害は,入院中よりも退院後の生活の中で明らかになることが多いので,そういった点でかかりつけ医が成年後見診断書を書くことが望ましい。
高次脳機能障害は,記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害の4つが主な症状とされる。詳細は成書を参照いただきたいが,高次脳機能障害情報・支援センターホームページ 1)には,これらの症状の簡単な説明と診断基準が掲載されているので,対象者の症状と照らし合わせることをお勧めする(表1)1)。紹介元などの病院で高次脳機能障害と診断されている患者であっても,診断書を作成する医師が,高次脳機能障害と改めて確認することが望ましいだろう。
受傷あるいは発症を契機とすることが明らかで,それ以前に原因とするものがある場合は高次脳機能障害としないことが,診断のポイントとなる。診断の根拠となる画像所見は確認しておきたい。具体的には頭部CTあるいは頭部MRIであるが,脳の損傷部位から,高次脳機能障害の症状の根拠が得られる場合は少なくない。たとえば,右大脳損傷による左半側空間無視,前交通動脈瘤破裂によるくも膜下出血後の前頭葉損傷による遂行機能障害,記憶障害などである。高次脳機能障害の診断は,神経心理学的検査を根拠とすることが多く,記憶障害や注意障害など,病院で詳細な検査が行われている場合がほとんどかもしれない。
かかりつけ医が神経心理学的検査を行って結果の解釈を行う機会は少ないと思われるが,仮に紹介元で検査が行われており,結果が情報提供されていれば,診断書作成の参考になる。