特定妊婦などを支援する厚生労働省の「産前・産後母子支援 特別養子縁組推進モデル事業」が全国10県で実施されている。埼玉県の委託を受けて同事業を実施する、さめじまボンディングクリニック院長の鮫島浩二氏に、事業の目的と成果、妊婦支援の課題を聞いた。
妊娠期から出産後の養育に支援が必要な特定妊婦や、いわゆる未受診妊婦への支援を強化するために厚労省が2017年度から始めました。当院は、もともと特別養子縁組も踏まえた母子支援に力を入れていたことから、18年度より埼玉県の委託を受けています。
事業の目的は特別養子縁組のあっせんではなく、あくまで困っている妊婦さんと生まれてくる赤ちゃんの支援です。
「子ども虐待による死亡事例等の検証結果」第1~15次報告によれば、2003年1月~18年3月までに虐待死(心中以外)した779人のうち、0歳児の割合は47.9%。その4割は出産日に死亡しており、主たる加害者は実母です。
わが子を虐待死させる背景には、貧困、男性の裏切り、パートナーからの暴力、SNSを使った性被害などがあります。産科医療機関が、行政と連携しつつ妊娠期から出産、産後まで継続的な支援を行うことで女性の苦悩を軽減し、虐待死につながるような事態をなくしたいです。