耳鼻咽喉科に限らず,広く内科,小児科の日常診療で遭遇することが多い。まずは応急の対応・処置を行い,局所の観察と処置が可能な耳鼻咽喉科専門医に相談することになろう。
原因疾患が特定できない本態性鼻出血と,原因疾患や誘因が存在する二次性鼻出血とがある。年齢層により鼻出血の高頻度の原因疾患(アレルギー性鼻炎,高血圧,抗凝固薬や一部の脂質異常症に対する薬物などによるものなど)に特徴があり,大いに参考となる。
擤鼻した際に鼻水に血液が混ざっている程度のものから,本格的に拍動性に血液が出ているものまで,いろいろな段階がある。また,痛みや悪臭など他の鼻副鼻腔領域の随伴症状を伴うものでは,原因疾患の重要な手掛かりになるので,見落とさないようにしなければならない。また,通常は片側からであるが,出血量が多いときなど片側の鼻出血にもかかわらず両側の鼻出血にみえることもある。後方への大量の出血は,窒息や誤嚥に注意を要する。
ほとんどは,鼻中隔前方のキーゼルバッハ(Kiesselbach)の部位からの出血であるが,蝶口蓋動脈またはその分枝,前・後篩骨動脈から拍動性の出血を認める場合もある。
貧血,血圧低下や全身性の症状がないかバイタルチェックを行う。局所検査として,まずは前鼻鏡検査にて鼻腔内の観察を行う。キーゼルバッハからの出血であれば,おおよその検討はつく。鼻吸引を行いつつ鼻内視鏡検査で鼻腔内の観察を十分に行い,出血点を同定する。このとき,血管原性良性腫瘍を出血原として認めることがある。また,悪性腫瘍では鼻内に悪臭を伴う血性分泌物を認めることが多いが,その場合,CT,MRIの画像検査により骨破壊や周辺臓器への進展の程度などについて把握すると同時に,鼻腔内に腫瘍の一部を認める場合には生検を行う。ただし,明らかな拍動を認め,色調からも強く血管原性腫瘍が疑われる症例では,生検を無理して行わない。
①血管腫,血瘤腫などの血管原性良性腫瘍,上顎癌,悪性リンパ腫,アレルギー性鼻炎を含む鼻副鼻腔炎や易出血性鼻茸
②外傷,薬物(抗凝固薬,抗脂質異常症薬など)による易出血傾向
③高血圧,肝疾患,腎疾患,血液疾患による二次性鼻出血
④遺伝性出血性毛細血管拡張症(オスラー病)
まずは患者の気持ちを落ち着かせて,手で鼻翼を圧迫させる。
姿勢は,血液が咽喉頭方向に流れないように坐位でうつむきとする。
血液を大量に飲み込むと,気分不良,嘔吐の原因となり,吐物が窒息等の原因になる。
できるだけ口から出してティッシュペーパーやタオルなどで拭いとる。
出血量の多少とも関係して,適宜,こまめなバイタルチェック,血管ルートの確保を行う。
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