【モデルマウスが,病因・病態の解明,新規治療薬創出の鍵になることに期待】
川崎病は,乳幼児に好発する冠動脈炎を特徴とする血管炎症候群である。川崎富作先生の報告から半世紀が経過した現在も患者数は増加傾向にあり,小児後天性心疾患の最多を占める。この間,免疫グロブリン大量療法などの治療が開発され,巨大冠動脈瘤を呈する患者は激減したが,現在も2%超で冠動脈などに後遺症が認められる。疫学的特徴から感染症の関与が示唆されること,日本人に傑出して多いことから,何らかの感染因子を契機に遺伝因子を有する児に血管炎が起こると考えられるが,病因はいまだ不明である。
当教室は,自然免疫受容体Nod1の合成リガンドを用いた川崎病類似冠動脈炎マウスを作製した1)。このマウスモデルでは,Nod1リガンドが血管構成細胞に作用し,接着分子を発現するとともにサイトカイン・ケモカインを放出し,それにより分化誘導された単球由来心臓マクロファージによって,部位特異的な炎症が惹起される2)。実際に,川崎病急性期患者の剖検病理所見でも浸潤細胞の主体は単球・マクロファージであり,本モデルと類似している。
本マウスモデルは,川崎病の病因・病態の解明ならびに,病態に即した新規治療薬創出の鍵になると期待される3)。
【文献】
1) Nishio H, et al:Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2011;31(5):1093-9.
2) Motomura Y, et al:Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2015;35(6):1423-33.
3) Murata K, et al:Clin Exp Immunol. 2017;190 (1):54-67.
【解説】
名西悦郎,西尾壽乘*1,大賀正一*2 九州大学小児科 *1診療講師 *2教授