☑小規模なクリニックも,広義には中小企業。院長には職員が健康でかつ安全に働けるように就労環境を整える「安全配慮義務」が法律で課せられている
☑院長には組織の使用者として,職員のメンタルヘルス対策を行う責任がある
☑小規模な組織であるからこそ,万が一の事態に備えてメンタルヘルス対策のシステムづくりが必要である
☑職員は,どんなときにメンタルを病みやすいのかを理解しよう
☑小規模な医療機関で発生しやすいリスクを具体的に認識し,その予防と対策を考えよう
(1)長時間労働によるリスクと対策について
①なぜ長時間労働がいけないのか?
②時間外労働を合法化する36協定にも上限がある
③長時間労働対策のヒント
(2)不規則勤務によるリスクと対策について
①なぜ不規則勤務がリスクになるのか?
②自宅オンコール,緊急呼び出しに要注意
③不規則勤務の対策のヒント
(3)クレーム対応のリスクと対策について
①クレーム対応は心のエネルギーを消耗させる
②クレーム対応対策のヒント
(1)パワーハラスメント(以下,パワハラ)の定義をしっかり頭に入れておこう
(2)発生しやすいパワハラのパターンとは?
(3)職場でのイジメにも雇用主が責任を問われることがある
(4)パワハラ対策のヒント
(5)パワハラ,イジメを未然に予防するためには?
(1)セクシュアルハラスメント(以下,セクハラ)になりうる具体的な言動を認識しよう
(2)セクハラも労働災害(以下,労災)になり雇用主が責任を問われることがある
(3)セクハラの予防と対策を実施しよう
(1)どのような変化がストレス化しやすいか?
(2)変化ストレスに対する対策を実施しよう
☑まず使用者である院長が忘れてはならない「安全配慮義務」について再確認しよう
☑職員の休職はいつ発生するかわからない。対応に慌てないために,就業規則や休・復職制度の整備や,メンタル不調者が発生した際のサポート体制をあらかじめシステム化しておく
1. 院長に課せられている安全配慮義務を確認しよう
2. 就業規則を作成し,院内ルールの基本をつくろう
3. 休職制度をしっかりと定めよう
4. 休職から復職までの仕組みづくりとサポートについて
(1)メンタル不調を疑ったら早めに面談を実施する
(2)職員から休職の診断書が提出されたら?
①診断書が提出されたら即時に休職が基本
②休職中の連絡は一元化する
③復職可の診断書が提出されたらすべきこと
④復職プログラム(リハビリテーション勤務)はどう設定すればよいのか?
小規模の診療所やクリニックであっても,広義には中小企業のひとつである。そして院長には組織の最高責任者として,すべての職員の労働に対する「安全配慮義務」が課せられている。
ご存じのように,今日の職場では心の病が多発している。筆者は嘱託産業医として都内約20箇所の中小企業を毎月訪問しているが,ほぼすべての会社がメンタルヘルス関連疾患の社員を抱えている。そのため,会社側もメンタルヘルス対策に真剣に取り組み始めている。
さて,皆様の診療所ではメンタルヘルス対策は進んでいるだろうか?もし職員の誰かがメンタルを病んでしまうと,大企業と違って小規模組織ではすぐに代替要員が確保できない。職場の中枢にいる職員が病んでしまった場合は,組織運営自体が成り立たなくなってしまうリスクも抱えている。たとえ他の職員が辛うじてフォローしたとしても,今度はその人に多大な負荷がかかり,第2,第3のメンタル不調が誘発されかねない。それゆえに小規模な組織であればあるほど,実はメンタルヘルス対策が非常に重要な課題である。
本特集では,筆者が産業医として,多数の中小企業と実践しているメンタルヘルス対策の中から,診療所など小規模な医療機関でも実践しやすい内容をピックアップして解説・紹介する。
ぜひ院長先生には,「中小企業の管理監督者かつその最高責任者である」ことを再確認して頂き,貴院のメンタルヘルス対策をより万全に整備し実施して頂きたい。