双極性障害は,経過中に典型的躁病相を呈する双極性Ⅰ型障害と,軽躁病相に加えて再発するうつ病相が生じる双極性Ⅱ型障害に大別される。
うつ状態を呈する患者の診療に際し,双極性障害とうつ病との鑑別が必要である。すなわち,過去の躁・軽躁病相の有無を確認するが,患者は躁・軽躁状態を自覚していない場合も多く,家族等とともに面談するのが望ましい。
双極性障害は再発率が高い点を念頭に置き,躁状態やうつ状態の治療においても,状態の改善と同時に次の病相の再発防止を念頭に置くことが重要で,さらに状態が改善した後も,再発予防効果が立証されている気分安定薬による維持療法を続ける。
躁状態では,病状の進行が早く,興奮,幻覚・妄想や問題行動を伴う場合もあり,気分安定薬とともに,速やかな治療効果が得られる抗精神病薬の処方を考慮する。また,躁状態では入院治療が適切な場合も多いが,病識が乏しいことも稀ではないため,非自発的入院治療を要する場合もある。うつ状態では,気分安定薬を基本として抗うつ効果を有する抗精神病薬の処方を考慮するが,抗うつ薬の処方は躁転や再発率上昇の可能性がある点を念頭に置き,処方の必要性は慎重に検討する。双極性障害患者は,自身にとって苦痛であるうつ病相のみが加療の対象で,躁・軽躁病相は好調な時期ととらえがちで,その結果,①目標値の上がり過ぎ,②睡眠時間の減少など生活リズムの乱れ,③「抑えられる薬は飲みたくない」との発想から治療アドヒアランスの低下,などが生じ,再発を招来することも多い。心理教育により,本人ならびに周囲の双極性障害に関する理解を促し,目標値の確認,生活リズムの安定,アドヒアランスの重要性,など再発予防に向けた対応を図ることが不可欠である。
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