腰部脊柱管狭窄症とは,「腰部脊柱管内を走行している神経組織(馬尾,神経根)と周囲組織(骨性,軟部組織)との相互関係が破綻し,神経症状をきたした状態」と定義される。腰部脊柱管狭窄症は疾患名ではなく病態を示している。腰部脊柱管狭窄症をきたす疾患には加齢変化を基盤とした疾患が多く,具体的には,「腰部脊椎症」,「腰椎変性すべり症」などがある。腰部脊柱管狭窄症の典型的な症状は間欠跛行である。
間欠跛行は,自覚症状と他覚所見から「馬尾型」,「神経根型」および「混合型」の3型に分類される(表)。馬尾型は,両足底や会陰部のしびれを呈し,高度に障害されると膀胱直腸障害もみられる。神経根型は,片側または両側性に下肢の痛み(坐骨神経痛)を呈する。混合型は,両者の症状を呈する。前屈したり,しゃがんだりすると下肢のしびれや痛みが改善するといった「姿勢性要素」が存在することが特徴である。鑑別すべき疾患としては末梢動脈疾患がある。血管性間欠跛行を呈する。姿勢性要素がないことが鑑別のポイントである。
画像診断ではMRIが有用であり,脊柱管の狭小化による硬膜管の圧迫が認められる。しかし,高齢者では画像上の変性所見や硬膜管の圧迫所見は無症状例でもみられる。安静時の神経学的所見だけでなく,歩行負荷試験などを行って症状や神経学的所見の変化を確認し,画像所見との整合性を慎重に判断する必要がある。
それぞれの型によって治療方針が異なる。
自然経過で改善する場合は少ない。足底のしびれのみで会陰部のしびれがみられない場合は,薬物療法(プロスタグランジンE1製剤など)をまず試みる。神経ブロック療法としては,交感神経節ブロックを試みる。罹病期間が1年以上の場合は効果が出にくい。症状が強い場合(会陰部の症状や膀胱直腸障害がみられる場合)は,手術(除圧術)を行う。
自然経過で改善する場合が多い。薬物療法〔非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs),プレガバリン,ミロガバリンなど〕とブロック療法が基本となる。神経ブロック療法としては,神経根ブロックを試みる。症状の改善がみられない場合は,手術(除圧術)を行う。
馬尾型と神経根型のどちらの症状が強いかによって治療を選択する。馬尾型の症状が強い場合(会陰部の症状や膀胱直腸障害がみられる場合)は,手術(除圧術)を行う。
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