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頭頸部癌の経口的ロボット支援手術について

No.4996 (2020年01月25日発行) P.54

中村一博 (日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 診療准教授)

清水 顕 (東京医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野 臨床准教授)

登録日: 2020-01-27

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  • 内視鏡技術の進歩により,以前より頭頸部癌が早期に診断できる時代になりました。早期癌が増えたことで低侵襲である経口的鏡視下手術の報告が増えました。しかし,ロボット支援手術や内視鏡下手術など,素人には違いがわかりにくく感じます。東京医科大学・清水 顕先生に,低侵襲な頭頸部癌の経口的手術,主にロボット支援手術について,ご回答をお願いします。

    【質問者】

    中村一博 日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 診療准教授


    【回答】

    【早期頭頸部癌に低侵襲かつ適応が広い発展性のある治療方法】

    経口的ロボット支援手術(transoral robotic surgery:TORS)は米国から広まった早期中咽頭癌,声門上癌,下咽頭癌の経口的切除術(transoral surgery:TOS)です。一方,他の経口的鏡視下手術は顕微鏡下経口手術を応用した経口的ビデオ手術(transoral videolaryngoscopic surgery:TOVS),消化器内視鏡を用いた内視鏡下咽喉頭手術(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery:ELPS)があります。後者はいずれも内視鏡技術の革新で主にわが国で発展しました。

    「頭頸部癌診療ガイドライン」1)ではT1,T2中・下咽頭癌,声門上癌は手術として,TOS・外切開による部分切除・放射線治療が併記されています。外切開との大きな違いは,外切開がないことによる外観の違い,嚥下に関わる咽頭周囲の筋肉を切断しないため嚥下機能が保たれること,そして発声機能の温存についても良好であることです2)。放射線治療を行った場合,形態は温存されるものの唾液分泌障害による嚥下障害・味覚障害がQOLを著しく低下させます。強度変調放射線治療(intensity modulated radiation therapy:IMRT)が唾液腺保護可能として広がりつつありますが,IMRTを使用しても唾液分泌不全による味覚障害は早期から数年は起こり,QOLの低下を認めます。したがってTOSで根治可能なものはTOSで行うことが最も侵襲が少ないと考えます。

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