上咽頭はブラインドスポットであるため,診断が遅れがちである。ほとんどはEpstein-Barr(EB)ウイルスが関与する未分化ながんである。高転移性である一方で放射線,化学療法にも高感受性である。そのため,一般の頭頸部扁平上皮癌よりも化学療法のウエイトが大きい。
上咽頭癌の症状は,①上咽頭の腫瘍自身による気道閉塞および耳管圧迫,②上咽頭外進展,特に海綿静脈洞浸潤による外転神経麻痺,③リンパ節および遠隔転移,に大別される。
上咽頭癌の初発症状では,滲出性中耳炎による伝音難聴,外転神経麻痺が有名であるが,最も多い臨床症状は上内深頸リンパ節(レベルⅡ)転移による頸部腫瘤である。
確定診断は,ファイバースコープを用いた上咽頭生検標本の組織診によるが,頸部転移などが初発症状で原発不明癌として精査を勧める際には,血清EBウイルス抗体価の上昇や頸部組織内のEBウイルスの存在から,上咽頭癌と診断される場合がある。EBウイルスの存在証明にはウイルス由来核酸であるEBERsに対するインサイトハイブリダイゼーションが頻用される。
画像診断は必須である。CTは頭蓋底骨破壊の評価,MRIは頭蓋内,頸部軟部組織浸潤の評価,FDG-PETは遠隔転移の評価のために施行する。病期分類において上咽頭癌のN期規定は他の頭頸部癌と異なるので,注意を要する。
頭頸部癌診療ガイドラインに則して考える。ステージⅠの場合には放射線単独,ステージⅡ以上ではプラチナ製剤を含めた化学放射線治療が柱となる。腎機能に支障がなければシスプラチンを用い,腎機能に問題があればカルボプラチン(パラプラチン®)を用いる。放射線治療は強度変調放射線治療(intensity-modulated radiotherapy:IMRT)を原則に考える。
基本的に,初回治療における手術適応はない。上咽頭に限局した再発例や頸部リンパ節遺残,もしくは再発に対しては救済手術が適応となる。
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