1 植込み型除細動器(ICD)適応拡大:冠動脈疾患患者における一次予防例の低心機能の基準において,電気生理学的検査や非持続性心室頻拍の合併が条件ではあるが左室駆出率(LVEF)35%→40%に適応が広がった。また二次予防の対象疾患に冠攣縮性狭心症に伴うものが追加された
2 皮下植込み型除細動器(S-ICD)適応が明記された
3 心臓再同期療法(CRT)適応に関して,QRS幅の下限値130ms→120msへ適応が広がった
4 心房細動(AF)カテーテルアブレーションの適応が広がり,抗不整脈薬を使用しなくても第一選択治療としてカテーテルアブレーションが可能になった
「不整脈非薬物治療ガイドライン」は2001年の初版後,2006年,2011年に改訂が行われ,今回が3回目の改訂となる。この間,新しい治療・診断機器が次々と使用可能となり,この分野は進歩が著しい分野である(表1)。今回は,改訂において参考となるポイントをまとめた。
一次予防としての植込み型除細動器(implantable cardioverter defibrillator:ICD)適応における変更に関して大きな変化はないが,「心筋梗塞発症40日以上または冠血行再建術後90日以上」「十分な薬物治療」の条件を満たして判断することが表の中に明記された。
また,冠動脈疾患患者における低心機能の基準が,電気生理学的検査や非持続性心室頻拍(nonsustained ventricular tachycardia:NSVT)の合併が条件ではあるものの左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)35%以下→40%以下に適応が広がったことが特徴的である。これは,積極的に電気生理学的検査を使っての冠動脈疾患患者のリスク評価が推奨されるべきという考えに基づいており,MUSTT試験において,40%以下の低心機能例で非持続性心室頻拍を合併している例では,電気生理学的検査で心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)/心室細動(ventricular fibrillation:VF)が誘発された場合,ICDにより生存率が上昇することが示されていることが引用された1)。
非虚血性心筋症の一次予防に関しても変更はない。過去の大規模試験をまとめたメタ解析の結果でICDが総死亡を抑制した2)ことから,前年に発表された心不全ガイドラインに倣い,「十分な薬物治療」「NYHA2度以上の心不全」「LVEF≦35%」が満たされた後に決定をされるべきであることが明記されている。
また今回の改訂では,一次予防に関するガイドラインの妥当性について,わが国で行われた2つの観察研究(CHART-2研究3),Nippon Storm研究4))で裏付けられたことが掲載されている。海外で行われた大規模試験の結果を受けて決定されてきたガイドライン基準がわが国でも妥当であることが示されたことは大きな進歩である。
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