【個々の発達特性に目を配り,環境調整を行うことが重要】
生きづらさの原因が成人期における発達障害にある,という記事を見かけることがある。また,その検査や治療のため医療機関を受診する人もいる。発達障害とは,「環境因によらない生まれ持った脳機能不全を基盤とした発達の偏りのために生きづらさを感じている状態」とされ,不注意や多動を示すADHDや「人の気持ちがわからない」ASD(自閉症スペクトラム症)やその合併にわけることができる。
医療機関ではWAISという知能検査上の偏りを調べることで発達障害の診断の手がかりとする。治療は公認心理士らによるカウンセリングや環境調整などが主体となり,薬物療法は抗ADHD薬を除けば効果は限定的である。
自分の生きづらさの原因がわかることで,より良く生きることができるようになる人がいる一方で,過度に診断がひとり歩きすることで逆に生き方が不自由となる人もいる1)。個々の発達特性に目を配り,その人に合った成長の機会を提供することができれば,周囲も本人も社会生活上の著しい難しさを感じることなく共存していくことができるのかもしれない2)。
【文献】
1) 宮岡 等, 他:大人の発達障害ってそういうことだったのか. 医学書院, 2013.
2) 神尾陽子, 編:成人期の自閉症スペクトラム診療実践マニュアル. 医学書院, 2012.
【解説】
町田康博 大阪医科大学附属病院精神神経科/ ねや川サナトリウム
金沢徹文 大阪医科大学附属病院精神医学講師