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睡眠薬の長期服用が認知症のリスクとなる根拠は?

No.5014 (2020年05月30日発行) P.51

井上雄一  (東京医科大学睡眠学講座教授)

登録日: 2020-05-29

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(1)睡眠薬(剤)は今,睡眠導入剤と同一と解釈してよいのでしょうか。
(2)睡眠薬の長期服用は認知症になる率が高いと言われていますが,その根拠についてご教示下さい。(大阪府 C)


【回答】

【睡眠薬の連用が認知症リスクを高めるという報告とこれを否定するものがあり,結論は得られていない】

(1)睡眠薬(剤)は睡眠導入剤と同一と解釈してよいか

睡眠導入剤という呼称は,わが国だけで汎用されているものです。超短時間半減期の睡眠薬の特性(効果発現が早いため入眠障害には有効な反面,体内からの排泄が早いので夜間中途に効果が失われるため睡眠維持障害への効果は低くなりがち)を理解する上では有用と思いますが,基本的には睡眠薬と睡眠導入剤は同じカテゴリに属するものと考えられます。睡眠導入剤のほうが安全性が高いという認識を持たれやすいようですが,安全性の面でも同等と考えてよいでしょう。

(2)睡眠薬の長期服用は認知症になる率が高いと言われる根拠

数種のメタ解析の結果をみますと,睡眠薬の連用が認知症リスクを高めるとするものとこれを否定するものがあり,結論は得られていません。しかし,睡眠薬使用により認知症状が出現する可能性があるとする報告においても,比較的服用開始初期に症状発現リスクが上昇したとされていることを考えると,薬剤が神経機能に非可逆的な障害をもたらすのではなく,潜在的な認知機能低下ないし予備能低下を有する高齢者において,睡眠薬服用により大脳皮質機能抑制が生じた結果として認知機能障害が顕在化した可能性があると思われます。一方で,慢性的な睡眠不足ないし不眠が認知症状発現リスクを上昇させるとする報告も散見されますので,不眠を放置せず低用量の睡眠薬で効率的に治療することが求められると言えるでしょう。

【回答者】

井上雄一 東京医科大学睡眠学講座教授

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