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急性肝不全(劇症肝炎)[私の治療]

No.5014 (2020年05月30日発行) P.37

小木曽智美 (東京女子医科大学消化器内科講師)

徳重克年 (東京女子医科大学消化器内科教授・講座主任)

江川裕人 (東京女子医科大学消化器・一般外科教授)

登録日: 2020-05-28

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  • 急性肝不全のうち初発症状出現後8週以内に,高度の肝機能異常に基づいて昏睡度Ⅱ度以上の肝性脳症をきたし,プロトロンビン時間が40%以下のものを劇症肝炎と呼ぶ。現在は急性肝不全,昏睡型に分類される。薬物や化学物質による中毒,虚血性肝障害,うっ血肝,妊娠脂肪肝,Reye症候群,血液悪性腫瘍の肝浸潤・ウィルソン病などの代謝疾患・肝切除後ないし肝移植後の肝不全などの非肝炎例は劇症肝炎からは除外するが,急性肝不全に含める。ただし,アルコール性肝炎は慢性肝疾患を基盤として発症する病態であり,急性肝不全からは除外する。

    ▶診断のポイント

    プロトロンビン時間と脳症に留意し,肝炎発症から脳症発現時期により,急性(10日以内),亜急性(11日~8週),遅発性(8~24週)に分類する。羽ばたき振戦を認めた場合は,昏睡度Ⅱ度である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    原因検索の上,原因に対する治療と肝庇護療法による肝細胞破壊の抑止を行う。

    意識障害をきたす疾患として,脳神経疾患や他の代謝疾患を鑑別する必要がある。確定診断にあたっては,A:急性アルコール中毒,代謝性アシドーシス,I:インスリン(低血糖,糖尿病性ケトアシドーシス),U:尿毒症,E:内分泌疾患,肝性脳症,O:低酸素血症,麻薬,T:外傷,体温異常,脳腫瘍,I:感染症(髄膜炎・脳炎),P:精神疾患,ポルフィリア,薬剤性,S:失神,脳卒中,くも膜下出血,痙攣,ショック,を鑑別し治療にあたる1)

    急性肝不全では,脳症が出現した場合には,血漿交換+血液濾過透析(HDF)を行い,適切なタイミングで肝移植を考慮する。また,感染症,脳浮腫,腎不全,消化管出血,播種性血管内凝固(DIC),低血糖などの合併症対策を講じる必要がある。

    適切な抗菌薬,抗真菌薬の予防的投与,体位変換などによる誤嚥性肺炎の予防を行い,脳浮腫に対してはグリセオール®(濃グリセリン)やD-マンニトールを使用する。

    劇症肝炎での脳症に対し,特殊組成アミノ酸輸液(アミノレバン®)は用いない(脳症を増悪させる恐れがある)。
    新鮮凍結血漿(FFP)投与,特に血漿交換ではナトリウム負荷となるので,うっ血性心不全に注意する。施行前に心エコー検査などの心機能評価を行うことが望ましい。

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