疲労骨折は,1回の外傷ではなく,度重なる小外傷の蓄積によって生じる骨折である。スポーツ選手に多いが,一般人に生じることも少なくない。骨の脆弱化が進んでいる高齢者では,少しの歩行でも疲労骨折が起こりうる。頻度としては腰椎,脛骨,中足骨の順に多い1)。特に思春期のアスリートに多く,早期の診断と治療が必要であるが,病初期には単純X線検査では診断できないことも多い。
問診で,スポーツ活動の種類,時間,1週間の頻度を詳しく聴取する。スポーツ選手以外では,最近の出張や墓参りなど,長距離歩行などの過大な運動負荷の有無を確認する。触診では圧痛点を詳細に調べる。特に足部および足関節においては,圧痛点がそのまま骨折の部位を表すことが多いので,触診は重要である。次に画像検査を行う。単純X線は基本ではあるが,骨折初期には診断できないことが多い。CT検査,MRI検査およびエコー検査が有用である。特にエコー検査は,単純X線検査で診断できない時点でも明確に骨折線を把握できる。また,治癒過程も正確にわかるので,どの時点でスポーツ復帰が可能かを判断でき,重要な検査法である2)。
基本的には保存的治療を行う。スポーツを禁止して,日常生活に不便を感じない程度の可及的な安静を指示する。疼痛に対しては,非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用する。四肢疲労骨折の難治例には超音波骨折治療を行う。これはlow-intensity pulsed ultrasound(LIPUS)と呼び,セーフス®(帝人ファーマ)などを使用して1日20分間,骨折部に超音波パルスを照射する治療法である。この治療法は骨折癒合期間を40%短縮することができる。2週ごとに骨折癒合を確認し,完全に骨癒合が得られてからスポーツへ復帰させる。
外科的治療が必要な疲労骨折は,脛骨中央部の跳躍型疲労骨折,第5中足骨の近位骨幹端疲労骨折,足関節内果疲労骨折,舟状骨疲労骨折,膝蓋骨疲労骨折および大腿骨近位部疲労骨折である。その理由は,栄養血管が少ないこと,バイオメカニクス的にひずみが蓄積しやすいことによる。
処方は基本的にはNSAIDsの消炎鎮痛薬が中心である。一手目として,消化器への副作用の少ないアセトアミノフェン類を用いる。効果のない場合はロキソプロフェンがよい。ただし,消化器への副作用を考慮し,H2受容体拮抗薬などを併用するとよい。
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