【質問者】
一森敏弘 名古屋第二赤十字病院移植・内分泌外科部長
【一般成人が微小癌を持っている頻度に比べて,未分化転化する可能性はきわめて低い】
甲状腺微小癌は病理解剖ではラテント癌として高率に発見され,超音波で発見可能な3mm以上に限定しても3.5~5.2%に発見されるとの報告があります。また,武部らは30歳以上の女性を対象に,乳癌検診時に頸部超音波検査と超音波ガイド下細胞診を用いて甲状腺を検診すると,3.5%に小さい甲状腺癌を認めたと報告しました。この頻度はラテント癌の頻度とほぼ一致しており,1993年当時のわが国における女性の甲状腺癌罹患率10万人当たり3.2人の実に1000倍以上でした。
当院の伊藤らによる微小癌の非手術経過観察1235例の解析では,経過観察中に遠隔転移を起こした症例や癌死した症例は皆無でした。また,腫瘍サイズの増大や新たなリンパ節転移の出現など疾患進行の兆候が出てから手術を行った症例においても,生命予後に影響を与えるような再発や甲状腺癌による死亡は皆無でした。
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