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外来で交通事故後のしびれを客観的に検査することは可能か?

No.5024 (2020年08月08日発行) P.53

三上容司  (横浜労災病院副院長/運動器センター長)

登録日: 2020-08-10

最終更新日: 2020-08-04

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外来でのしびれの客観的検査法についてご教示下さい。たとえば,交通事故による腰部打撲後,被害者に「片側の下肢のしびれが残る」などという訴えがあったとき,客観的な証明方法があれば,詐病の疑いも生じることはないと思われますが。(大阪府 C)


【回答】

【患者が感じているしびれを客観的にとらえる方法はなく,問診,身体所見,画像所見などから総合的に判断】

残念ながら,ご質問のような状況で患者が感じているしびれを客観的に証明する方法はありません。問診,身体所見,画像所見などから,総合的に判断するしかありません。以下,診察時に注意すべき点について述べます。

(1)問診

しびれの性状,範囲などを確認しますが,事故との関連性においてはしびれの発症時期を確認することが重要です。腰部打撲で下肢にしびれが生じる場合,損傷部位は腰部神経根か,あるいはさらに末梢の腰・仙神経叢,坐骨神経などの末梢神経が想定されます。末梢神経損傷によるしびれなどの異常感覚は,損傷後直ちに生じます。事故から数日を経て生じた下肢しびれは,事故との因果関係が疑わしいということになります。

(2)身体所見

感覚障害の範囲の同定,徒手筋力検査による筋力評価,深部腱反射などの神経診察が基本となります。感覚障害の範囲が,神経支配領域に一致しない場合,あるいは,再現性がない場合,末梢神経障害の存在は疑わしいと考えられます。また,損傷される末梢神経の部位により,想定される神経学的所見(感覚障害の範囲,筋力低下の範囲,深部腱反射の有無・低下など)が決まってきますが,これらの所見が矛盾する場合,末梢神経障害は疑わしいと判断されます。すなわち,本人の訴える下肢しびれを裏付ける医学的所見に乏しいということになります。
神経診察法については,成書を参照してください。

(3)画像所見

腰仙椎の脊柱管内の検索には,MRIが有用です。脊柱管狭窄・椎間板ヘルニア・占拠病変などは,下肢の疼痛やしびれを生じさせる疾患であり,MRIはこれらの疾患の検索に有用です。ただし,MRI画像上これらの所見があるからといって,直ちにしびれが客観的に裏付けられたとは言えません。あくまで,神経学的所見が主でMRIは補助的検査です。

(4)電気生理学的検査

末梢神経障害の評価法として,針筋電図,神経伝導検査などがありますが,特別な機器が必要であり,いずれも外来で簡便に行うことは難しい検査です。これらの検査は,末梢神経の機能を評価するには有用ですが,しびれを客観的に証明する方法とまでは言えません。

【回答者】

三上容司 横浜労災病院副院長/運動器センター長

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