1 在宅医療・介護サービスに関する世界で初めてのガイドラインである
2 目的は在宅医療・介護サービスの意義や問題点を明らかにすることである
3 実情にも合わせて高齢者がターゲットで,QOL,満足度,ADL,さらにはその介護者のQOL,満足度,介護負担などもアウトカムとして重要視した
4 6つの重要課題,計29のCQ(clinical question)を設定し,それぞれに推奨内容の検討がされている
5 多くの限界が存在し,今後この分野における研究の推進が望まれる
在宅医療ならびに介護関連各種サービスは,超高齢社会における持続可能な継続性のある医療・ケアシステムとして,地域包括ケアシステムの中で推進されつつあるところである。地域包括ケアシステムは,少子高齢化に対応するためにわが国が進める政策の柱と言える。これらの政策的な医療・ケアはもちろん重要なわけではあるが,従来の病院完結型医療からこのシステムへの変革が,肝心な患者やその家族たちにとって,健康上メリットがなければ,継続どころか存続さえ難しいこととなる。さらに大枠の概論は構築されたとしても,その中で行われる個々の医療やケアが,これら医療・介護サービスの利用者である患者本人やその家族が納得できるものであり,医療・介護上もメリットがあるものでなければならない。
しかし,現在わが国で推進されている在宅医療,介護サービスの利用者に対するメリット,またはデメリットに対して十分な検証がなされてきたとは言えない。高齢化最先進国であるわが国におけるこれらの医療改革は,我々独自のものであり,これらの効果,または従来医療との比較などは海外でなされてはおらず,独自で検証し,改良・改革していく必要がある。このことは,世界からの研究成果を活用できる他の診療ガイドラインとは大きく異なる点である1)。
在宅医療はなお発展途上であり,今後の需要を考えてもさらに発展の必要がある。この発展途上段階でのガイドライン作成は時期尚早との意見もあると思うが,現時点での在宅医療・介護サービスの立ち位置,診療上明確なこと,不明なことを明らかにしておくことは,今後の在宅医療の発展に向けてのチャレンジであり,必要不可欠なマイルストーンなのである。
在宅医療は,地域包括ケアシステムにおける医療の要であるが,同様の医療システムは世界には存在しない。諸外国における在宅での医療は医師による訪問ではなく,その多くが看護師による訪問看護である。したがって在宅医療さらにはそれに付随し,介護(医療)保険で使用される多くの介護サービスはわが国独自のシステムであり,この効果検証は我々で実施しなければならない。しかし,今のところこれらの効果に関してシステマティックレビューがなされ,ガイドラインとして世に出されたものはない。
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