【根治的切除をめざした大切な前治療】
非小細胞肺癌に対する根治的治療として,基本的に臨床病期Ⅰ~Ⅱ期,Ⅲ期の一部が外科治療の適応となる。Ⅲ期のうち,縦隔リンパ節転移を認める症例(N2肺癌)は,一般的には化学放射線治療が主体であるが,多様な集団であり,一部のN2肺癌では導入療法後の外科治療も行われている。
INT0139試験のサブグループ解析では,切除可能・病理学的に確認されたN2症例に対して,術前化学放射線療法後に肺葉切除された症例で有用性が示唆されている1)。肺癌診療ガイドライン2018年版2)では,その治療方針決定のためには呼吸器外科医を含む集学的治療チームによる治療方針の決定をし,切除可能な臨床病期ⅢA期(N2)に対しては,術前化学放射線療法を行うように提案されている。薬物療法のレジメンとしてはプラチナ併用療法が推奨される。
また,肺尖部胸壁浸潤癌は,鎖骨下動静脈や腕神経叢などが近く切除マージンの確保が困難で,手術単独では局所制御が困難である。よって,術前導入療法が重要である。国内の第2相試験(JC OG9806)でも完全切除割合68%,5年生存割合56%と成績は良好で3),肺癌診療ガイドラインでは切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)に対して術前化学放射線療法後に外科治療を実施することが推奨されている。
【文献】
1) Albain KS, et al:Lancet. 2009;374(9687):379-86.
2) 日本肺癌学会, 編:肺癌診療ガイドライン2018年版. 第5版. 金原出版, 2018.
3) Kunitoh H, et al:J Clin Oncol. 2008;26(4):644-9.
【解説】
三和 健 松江赤十字病院呼吸器外科部長
中村廣繁 鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科教授