アストラゼネカ英国本社は9月9日、オックスフォード大と開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン「AZD1222」について、すべての臨床試験(治験)を一時的に中断したと発表した。英国で実施中の第III相試験で原因不明の病状を呈する1件の事象が発生したため。治験再開の時期については「第三者委員会の判断に従う」としている。
AZD1222は、複製できないよう処理したチンパンジー由来のアデノウイルスを利用し、SARS-CoV-2のスパイク蛋白を形成する遺伝子を身体に入れることで免疫をつけ、感染の防御を狙うウイルスベクターワクチン。
AZD1222の治験は世界各国で進められており、現在、南アフリカで第Ⅰ/Ⅱ相試験、英国で第Ⅱ/Ⅲ相試験、ブラジル・米国で第Ⅲ相試験が実施されている。
9月4日には日本での第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の開始も発表され、アストラゼネカの日本法人は、日本人に接種した場合の安全性と有効性を評価するため、18歳以上の被験者約250人を対象とした治験を実施するとしていた。
アストラゼネカは、治験のタイムスケジュールへの影響を最小化するため、今回発生した事象について第三者委員会による審査を迅速に進める方針。パスカル・ソリオ最高経営責任者は「アストラゼネカはサイエンス、安全性、社会の利益を企業活動の中心に据えており、今回の一時的中断はこれらの原則に従うことを証明するもの。治験再開の時期については第三者委員会の判断に従う」としている。
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