酒皶(rosacea)は,顔面紅潮,毛細血管拡張,丘疹,膿疱,鼻瘤など,いわゆる赤ら顔とほてりを特徴とする慢性炎症性疾患で,中年以降の白色人種に好発するが,有色人種では稀である。病因としては,皮脂分泌亢進,血管運動制御の異常,ニキビダニの関与,TLR2やカリクレイン5,さらにはカセリサイディンなどの抗菌ペプチド機能異常,日光照射などがある1)。
顔面中央部を主とする特徴的な臨床症状と病歴に基づく。面皰がみられないことは痤瘡との鑑別で重要である。20歳未満の時期に顔のほてりや発赤をしばしば繰り返すなど,素因のエピソードが診断の一助となる。
臨床像は一般的に以下の4型にわかれるとされる2)が,これらが混在することに留意が必要である3)。
①紅斑毛細血管拡張型酒皶:顔面の紅潮と毛細血管拡張を中心とする。
②丘疹・膿疱型酒皶:丘疹と膿疱が主体で面皰はみられない。
③鼻瘤・腫瘤型酒皶:皮膚の粗糙な肥厚と結節の集簇による凹凸を特徴とする。
④眼型酒皶:結膜充血や異物感,熱感,羞明感などの眼症状を呈する。
まず,ステロイド長期外用の有無を確認し,医原性疾患である酒皶様皮膚炎の鑑別が重要である。他の鑑別疾患としては尋常性痤瘡,マラセチア毛包炎,ステロイド痤瘡,脂漏性皮膚炎,顔面播種状粟粒性狼瘡,丘疹型サルコイドーシス,全身性エリテマトーデス(SLE),皮膚筋炎,光線過敏症,接触皮膚炎などがある。
酒皶の初期治療の中心は,日光曝露(サンスクリーンの使用など),精神ストレス,寒暖差や飲酒,香辛料の多い食品,運動,不規則な生活リズムなどの誘因を避けることである。主に丘疹や膿疱が多発するなどの炎症期では抗菌薬の内服も検討する。保険外診療による薬物療法などを活用しつつ,症状の良好なコントロールをめざす。
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