【質問者】
髙橋秀典 大阪国際がんセンター消化器外科膵臓外科長
【術前化学療法を8カ月以上施行できた症例,tumor markerの十分低下した症例などが候補として挙げられる】
膵癌の外科切除は困難で,診断時に切除可能な割合は15~20%にすぎず,局所進行を理由に切除不能(UR-LA)となる割合が約40%,遠隔転移を理由に切除不能(UR-M)となる割合が35%です。
切除不能(unresectable:UR)膵癌に対して化学療法後に切除する試みがconversion surgery(CS)です。CSの報告は2000年代からあるものの,本格化したのはFOLFIRINOXやゲムシタビン+nab- paclitaxel(GnP)による新規化学療法が2011年以降に登場してからです。例を挙げると,ハイデルベルク大学でFOLFIRINOXを中心に化学療法(化療)を加えたUR-LA患者575例の切除率は61%,生存期間の中央値は15.3カ月(非CS例は8.5カ月)だったという報告があります1)。また,Johns Hopkins大学では,4カ月以上化療を継続した116例のUR-LA患者の72%にCSを施行し,生存期間の中央値は約35カ月(非CS例は約16カ月)でした2)。一方,イタリアで行った前向き登録では,6割のUR-LA患者を含む680症例のCS率は約9%にすぎませんでした3)。このように,欧米の化療後のCSの結果には大きなばらつきがあります。これは,治療対象がUR-LAのみならず,切除可能境界(borderline resectable:BR)やUR-Mを含み多様であること,施設間の切除適応の違いなどに起因していると思います。
残り832文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する