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特集:新しくなったアルコール依存症治療─新薬とガイドライン改訂をふまえて

No.5038 (2020年11月14日発行) P.18

樋口 進 (久里浜医療センター院長/依存症対策全国センター長)

登録日: 2020-11-13

最終更新日: 2020-11-11

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1979年東北大学医学部卒。慶應義塾大学医学部精神神経科に入局後,米国立保健研究所留学,久里浜医療センター臨床研究部長,副院長を経て現職。WHO研究研修協力センター長,依存症対策全国センター長も兼務。

1 アルコール依存症とは─その診断と重症度
・世界保健機関(WHO)によると,アルコールは200以上の健康障害を引き起こす。
・継続する大量飲酒とそれに伴う健康・社会問題が混在する状態を「アルコール依存症」と呼ぶ。
・診断は国際疾病分類第10版(ICD-10)の診断ガイドラインを使う。6項目からなり,3項目以上を満たす場合に依存症と診断する。
・スクリーニングテストとして,アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)がよく使われる。
・わが国のアルコール依存症の有病率は横ばいと推計される。
・重症度は,診断ガイドラインの合致項目数やAUDITの得点を目安にする。

2 アルコール依存症の治療ギャップとその克服
・治療の必要があるにもかかわらず,治療を受けていない人の数・割合を「治療ギャップ」と呼ぶ。
・依存症治療ではこのギャップが大きい。
・ギャップの改善は,受診者および回復者の増加につながる。
・このギャップを埋めるために,医療連携の促進,依存症治療の敷居を下げるなどの努力がなされている。
・一般医療機関で軽症のアルコール依存症の診療が進めば,ギャップの軽減につながる。
・その点もふまえ,依存症の新しい診断治療ガイドラインが作成された。
・最近,アルコール依存症に対する減酒治療がなされるようになり,これも治療ギャップ改善に寄与している。

3 「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」
・「アルコール・薬物関連障害の診断・治療ガイドライン」の初版出版から16年後の2018年に,新ガイドラインを出版した。
・厚生労働省の研究班と依存症関連2学会が共同して作成にあたった。
・ガイドラインのターゲットは,精神科のみならずすべての臨床科の研修医およびプライマリ・ケア医である。
・一般医療等で遭遇する症例を挙げてその対応を具体的にまとめてある。
・アルコール依存症患者に対する減酒治療を初めて収載した。

4 アルコール依存症の減酒治療の実際
・久里浜医療センターで行っているアルコール依存症に対する減酒治療の概要を示した。
・外来での治療の実際を,診療のステップごとにわけてわかりやすく説明した。

5 アルコール依存症の薬物治療
・アルコール依存症の飲酒行動改善のための治療薬には,断酒を目的にしたものと減酒を目的にしたものがある。
・アカンプロサート,ジスルフィラム,シアナミドが前者,ナルメフェンが後者にあたる。
・前者では,アカンプロサートが第1選択薬で,抗酒薬と呼ばれる残り2薬は,断酒への動機づけがある患者に使用する第2選択薬である。
・ナルメフェンが2019年から臨床使用できるようになった。
・臨床経験をふまえ,ナルメフェン使用上の注意点をまとめた。
・ナルメフェンの処方権に関する情報を提供した。

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