頸椎症の病態は,椎間板・椎体・椎間関節など頸部の脊柱全体の加齢変化である。脊髄あるいは神経根の圧迫により神経症状を呈すると,頸椎症性脊髄症,頸椎症性神経根症と称される。
頸椎症性脊髄症では,手指のしびれ感,体幹・下肢の感覚鈍麻が両側性に出現することが多い。手指の巧緻運動障害,痙性歩行障害,排尿障害を呈する1)2)。
頸椎症性神経根症では通常,一側上肢の当該神経根支配領域への放散痛が生じ,続いて感覚鈍麻,脱力,腱反射低下などの神経脱落症状を呈する。
神経学的所見としては,Spurlingテストなどの疼痛誘発テスト,感覚,運動,腱反射の所見により神経根症状,脊髄症状を判別する1)2)。
画像診断では,頸椎単純X線像で椎間板腔狭小化,椎体骨棘などの脊柱の変性所見を検出する。脊柱管前後径が12mm以下では脊柱管狭窄と判断され,脊髄症発生の危険性が高くなる。X線前後屈機能像で,後屈位に脊柱管が狭くなる動的脊柱管狭窄の有無を評価する。MRIはスクリーニング検査として最も有用であり,圧迫因子と脊髄・神経根の関係を立体的にとらえることができる。
歩行障害,手指巧緻運動障害,排尿障害などの脊髄症状が重度の場合を除き,まず保存療法が選択される。特に神経根症状の場合は保存療法にて軽快する確率が高い。
重症の脊髄症,すなわち,日常生活動作に不自由な手指巧緻運動障害,歩行困難を伴う痙性歩行障害,膀胱直腸障害が明らかな場合は手術適応となる。また,保存療法に抵抗性の,耐えがたい上肢痛を有する神経根症では,手術が適応されることがある。
画像検査で頸部脊柱の変性所見が確認できても,それらは無症候性であることが少なくない。したがって,神経学的所見と画像所見が合致して初めて責任病巣となることを銘記すべきである。
脊髄症が重度となり脊髄に不可逆性の変化が生じると,手術を行っても十分な神経症状の改善が得られなくなる。脊髄症が重度となる前に専門医にコンサルトし,手術の時期を逸しないように配慮すべきである。
残り1,452文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する