新型コロナウイルス感染症(COVID-19)回復者の抗ウイルス抗体や中和抗体を測定する研究を進めている横浜市立大の研究グループ(研究代表者:山中竹春臨床統計学主任教授)は12月2日、「回復者のほとんどが感染から6カ月後も抗ウイルス抗体と中和抗体を保有している」とする中間報告を発表した。研究グループは感染後12カ月時点の抗ウイルス抗体・中和抗体も測定するとしている。
中間報告は、「コロナ回復者専用抗体検査PROJECT」(https://covid19-kaifuku.jp/)に応募した「感染から6カ月が経過したCOVID-19回復者」のうち、10月26日までに採血し検体測定を完了した376例(患者背景:無症候4%、軽症71%、中等症19%、重症6%、経過日数:平均182日、年齢:平均49歳、男女比:1対1)のデータを解析したもの。
再感染阻止に直結する中和抗体は98%が保有しており、重症度別に見ると、無症候・軽症者の保有率は97%、中等症・重症者の保有率は100%だった。この結果について研究グループは「世界中で開発されている予防ワクチンの開発にも一定の期待が持てるものとなった」としている。
さらに376例について中和抗体の強さを調べたところ、中和抗体の強さが「High」レベルの回復者の割合は軽症31%、中等症44%、重症76%で、軽症から中等症、中等症から重症になるほど中和抗体の活性がより強い傾向にあることが分かった。
抗ウイルス抗体もほとんどの回復者が保有していたが、横浜市大が開発した高精度の全自動抗体検出技術で4種類の抗体(NP-IgG、SP-IgG、NP-total Ig、SP-total Ig)を測定したところ、抗体検査で一般的に最もよく用いられるNP-IgGの陽性率は無症状・軽症者で79%と比較的低いことが分かった。
研究代表者の山中教授は2日に開いた記者会見で、「COVID-19回復者を一定期間追跡した日本初かつ国内最大規模のデータで、ほぼ全例に中和抗体と抗ウイルス抗体が残っていることが認められた」と研究成果の意義を強調。「新型コロナウイルスを理解するにはデータに基づいて検討していくことが必要」と訴えた。
また、抗ウイルス抗体については、NP-IgGの陽性率が無症状・軽症者で比較的低かったことから、「抗体検査でどの種類の抗体を測るかが重要ということも分かった」と述べた。