全世代型社会保障検討会議(議長:菅義偉首相。以下、検討会議)は12月14日「全世代型社会保障改革の方針」(以下、「最終報告」)を取りまとめ、翌日閣議決定されました。本稿では「最終報告」の特徴を、「中間報告」(2019年12月)と「第2次中間報告」(今年6月)との異同に注目しながら、検討します。
「最終報告」の形式面の最大の特徴は、本文がわずか5頁に過ぎないことです。私は1980年代から40年近く、政府・厚生(労働)省の社会保障や医療制度改革の公式文書を検討してきましたが、これほど薄い報告は初めてです。後述するように、内容面でも「薄い」と言わざるを得ません。検討会議が2019年9月の設置以来1年3か月間も議論してきたにもかかわらず、この程度の報告しかまとめられなかったことは、政治と政府検討組織の劣化の現れと言えます。
「最終報告」の柱立てをみても、各論は少子化対策(新規)と医療の2つだけで、「中間報告」にあった年金と労働と予防・介護が消えており、とても「全世代型社会保障」改革とは言えません。労働や年金分野については、所要の改革が第201回国会で実現したためとされていますが(2頁)、「予防・介護」が消えたことの説明はありません。
私は、菅内閣になって官邸での経済産業省の影響力が失墜し、予防・健康づくりにより医療・介護費用の抑制とヘルスケア産業の育成の両方が実現できるとの同省の「根拠に基づく」ことのない主張が、政権内で否定されたことの表れと推察します。